桜花舞うとき、きみを想う


きみは何か思い詰めている様子で、空気がぴんと張った。

ぼくはますます弱った。

きみの不機嫌の理由がわからない。

「アヤちゃん、ぼくは…」

「やめて!聞きたくないの」

とうとうきみは、顔を真っ赤にして泣き出してしまった。

まるで駄々っ子のようだった。

一体どうしたというのだろう。

ぼくには、きみがこんな風になる心当たりなんてひとつもなかった。



「大事な話なんだよ、きちんと聞いて欲しいんだ」

ぼくはきみの肩に手を乗せ、潤んだ目をした顔を正面から覗き込んだ。

そして、白い頬を伝う涙を指で拭った。



< 16 / 315 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop