桜花舞うとき、きみを想う


「取り乱したりして、ごめんなさい」

きみの熱い息に乗って、かすかに薄荷の香りがした。

「だけど礼二さん、やっぱり今は聞けない」

「どうして」

「あんまり急だから、心の準備が出来ていないの」

きみの頬を、また涙が伝った。

「心の準備って、何のこと」

「こんなこと言ってはいけない、喜ばなくてはいけないってわかってるのよ。でも、そう出来る自信がないの」

顔をぐしゃぐしゃにして、きみは鼻をすすった。

「笑顔で受け止められる自信がないの」



このとき、きみがとんでもない勘違いをしていることに、ぼくはようやく気付いた。

そうとわかったら、無性に嬉しくなった。



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