桜花舞うとき、きみを想う
「磯貝さんは、自分がしていることを上官方に知られていないと思っているのでしょうか」
「おそらくな。うまくいってるとでも思ってるだろ」
吐き捨てるような宮崎さんの言葉に、ぼくは背筋を悪寒が走りぬけた。
「宮崎主計長は、磯貝さんをどうするおつもりなのですか」
「このまま野放しにはできないよ。実は前々から、次に同じような事態が起こって磯貝の名前が出たら対処すると決めていたんだ」
宮崎さんの眼差しは、どんどん鋭さを増した。
これまでの立ち居振る舞いから温厚な印象を受けていただけに、言い得ぬ恐怖を感じた。
「対処、というのは」
ぼくの問いを遮るように、宮崎さんはガタリと音を立てて立ち上がった。
「これ以上は知らないほうがいい。さあ、話は済んだ。もう寝よう」
とても穏やかでない発言を残し、立ち去ろうとする宮崎さんの背中に、
「けれど今回のぼくの行動は、必ずしも磯貝さんにそそのかされたとは言い難いものです」
と、素直に寝室に引き返す気になれなかったぼくは、食い下がった。