桜花舞うとき、きみを想う
何も言わなくなったぼくを見て、宮崎さんは軽く息を吐いた。
「そうと決まれば、実行あるのみだ」
ぼくは俯いて、唇を噛み締めた。
(ぼくがこんな軽率な行動をしなければ、磯貝さんは……)
後悔しても後の祭りだが、やさしい顔で恐ろしいことを言う宮崎さんが薄気味悪く思えて仕方なかった。
「だが、その前にひとつ約束をして欲しい」
宮崎さんが言った。
「確認するが、今夜のことは誰にも話していないな」
「もちろんです」
「では今後も、誰に何を訊かれても、何も知らないと答えてくれ。今夜のことはなかったことにする。俺もお前も、すべて忘れるんだ」
「忘れる……」
「それが自分を守ることになる。少しでも何かを知っている風な態度を見せれば、磯貝はたちまちお前を、仲間を売った悪者に仕立て上げるだろう。そうなって欲しくないんだ。わかるな」
宮崎さんの目は真剣で、ぼくは反射的に頷いていた。