桜花舞うとき、きみを想う
「実は、何も用意がないんだ」
ぼくは、きみの手を取った。
「きみを忙しい昼時に呼び出したのも、急にそうせざるを得ない状況になったからだ」
きみは、まだ的を射ない顔をしてぼくを見ている。
「だけどこれだけは言える。そうじゃなくたって、近いうちにぼくらはこうなるはずだったって」
ぼくは、きみの手を握る手に力を込めた。
「アヤちゃん。いや、石岡アヤ子さん」
きみの潤んだ瞳が、ぼくを映していた。
「どうかぼくと、結婚してください」