桜花舞うとき、きみを想う
おぼつかない足取りの磯貝さんは、思った通り重く、小柄なぼくでは支えるのが大変だった。
それでも、とにかくここを出なければという思いが勝り、ぼくは無我夢中で磯貝さんの巨体を抱えるように歩いた。
宮崎さんは、まだ興奮が冷めない様子で、荒い呼吸をしながら、横を通り過ぎる磯貝さんを睨んでいた。
烹炊所の出口まで来たとき、
「磯貝」
宮崎さんがぼくらを呼び止めた。
「おれは、お前が言ったことを絶対に忘れないぞ」
(言ったこと?)
それが何のことなのか、ぼくにはわからなかったが、磯貝さんの体が緊張したように強張ったのが伝わってきた。
「もう二度と、お前の好きにはさせない。ひとりの犠牲者も出さない」
宮崎さんは強い口調で、磯貝さんの背中に言った。
「おれは、自分の命にかえても部下を守る」