桜花舞うとき、きみを想う
烹炊所から医務室までは、それほど遠くはないが、重傷を負っている磯貝さんには果てしない距離だろう。
一歩ずつ、少しずつ、そこに床があるのを確かめるように、ゆっくりと足を抜き差ししながら、ぼくらは進んだ。
医務室が近づくにつれ、ぼくは足取りが重くなった。
宮崎さんと向かい合ったあの部屋が、近かったからだ。
ちょうどその部屋、つまり菓子類の保管庫を通りかかったとき、
「お前、昨日おれに菓子の話を聞いて、どう思った」
磯貝さんが言った。
ぼくは心臓の鼓動が磯貝さんに伝わりやしないかと気が気でなくなり、何も答えられなかった。
「欲しいって思ったか」
磯貝さんは、なおぼくを質した。
「欲しいとは思いましたが、どこにあるのか教えてもらえなかったので……」
精一杯の平静を装い答えると、磯貝さんは、ちらりと保管庫の扉に目をやり、ふっと笑った。