桜花舞うとき、きみを想う
医務室の外に、宮崎さんが立っていた。
壁に寄りかかり腕を組んで、戸惑いながら出て来たぼくをじっと見ていた。
「どうだった」
おもむろにそう訊かれたので、
「少し怪我の様子を見ましたが、かなり痛そうでした」
と答えると、宮崎さんは軽く首を横に振った。
「違うよ。さっき医者が入って行ったろ。彼、どうだった。おもしろいだろ」
宮崎さんは、笑いを堪え切れないといった感じで言った。
ぼくには、宮崎さんのその態度が癇に障った。
「おもしろいとか、考える余裕はありませんでした。主計長は、磯貝さんの怪我が心配ではないのですか」
思わず強気に詰め寄ってみたが、宮崎さんは一笑に付した。
「心配?さっきのおれの言葉、聞いてただろう。海に投げ捨ててやろうと思ったくらいなんだから、軽く済んだほうさ」
ぼくが言葉を失っていると、このまま治らないほうが主計科が平和でいいんじゃないか、と付け加えた。