桜花舞うとき、きみを想う
軽い足取りで踵を返す宮崎さんの背中に、
「自分は、宮崎主計長という人がわからなくなりました。温厚で部下にも対等に接してくださる方だと思っていたのに……」
と投げかけると、宮崎さんは足を止め、振り向いた。
「思っていたのに?」
そう返され、ぼくは口をつぐんだ。
いくら腹が立っても、やはり上官に対し意見を述べるなど言語道断だという理性が働いた。
けれど、その先は宮崎さん自身がつないだ。
「まるで人が変わったよう、とでも言いたかったのかな」
ぼくは下唇を噛んで、じっと宮崎さんを見据えた。
黙ったままのぼくに、
「そんな怖い顔するなよ」
宮崎さんは困ったように眉を下げ、続けた。
「仕方なかったんだ。今までのおれのままでは、また同じことが起こる。それを防ぐためなら、おれは鬼にだってなる」