桜花舞うとき、きみを想う


「しかし、どうしても自分には、あそこまでしなくても良かったのではないかと思えて仕方ありません」

半ば涙目で訴えるぼくに、宮崎さんは深いため息をついた。

「中園は部外者というわけでもないから、特別に教えてやるよ。磯貝は、やっぱりお前が思っているような奴じゃなかった」

『被害者』の証言が数多くあるからといって、『加害者』とされる磯貝さんの言い分も聞かずに処分するのでは、上官として平等ではないと判断した宮崎さんは、話し合いの場を設けることにしたのだと教えてくれた。

しかし、部下を思う宮崎さんの気持ちは、磯貝さんに届くことはなかった。

「昨日、お前が必死になって磯貝をかばっているのを見て、もしかしておれの勘違いだったんじゃないかって思ってたんだ。でもそうじゃない。やっぱり正しいのはおれだったんだよ」





『他人を陥れることで自分が優位に立てるなら躊躇しません。相手が敵だろうが仲間だろうが関係ない。自分に言わせれば、簡単に乗せられるほうが馬鹿で間抜けってことですよ』





呼び出しに応じた磯貝さんは、宮崎さんがいくら諭しても聞く耳を持たず、いとも簡単にそう言ったという。

それでとうとう、宮崎さんの堪忍袋の緒が切れた。



< 196 / 315 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop