桜花舞うとき、きみを想う


ぼくはもともと、男らしくない人間だという自覚はあった。

兄が出兵してから多少の意識の変化があったとはいえ、ずっと次男坊として甘やかされて育って来たせいで、責任感に欠けた部分があったのだと思う。

嫌なことからはいつも逃げていて、それでも周囲の支えのおかげで何とかやって来られたのがいけなかった。

逃げることで、自分を守ることを覚えてしまった。

「もう少しだけ、磯貝さんと話をさせていただいてもよろしいでしょうか」

ぼくは宮崎さんの背中に言った。

振り返った宮崎さんは目を丸くした。

「お前、おれが今言ったこと聞いてなかったのか」

「いえ、もちろん肝に命じておくつもりです。ただ、どうしても今の磯貝さんの気持ちを聞いておきたいのです」

「やめておけ。足元をすくわれるだけだ」

度重なる宮崎さんの忠告を無視するつもりはなかったが、そのときのぼくは、いても立ってもいられず、宮崎さんに一礼すると、医務室の扉に手をかけた。

しかし、そのときだった。

耳をつんざく轟音と共に、強烈な振動が艦を襲った。



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