桜花舞うとき、きみを想う
「中園、体は大丈夫かっ」
宮崎さんが改めて聞いた。
ぼくは呼吸をぜいぜいさせながら、両手で体中を触り、とりあえず骨に異常がなさそうなことを確かめ、しっかりと頷いた。
「それならここで、握り飯を作れ。おれは記録を取りに出るから」
宮崎さんは、言いながら忙しなく動き回り、筆記具を持って走って行った。
ぼくは何が何だか整理のつかない頭で、先輩に指示されるまま配置につき、皆と並んでまだ熱い飯を握った。
主計兵は、一度戦時体制に入ると休みなく食事を作り、艦中に配るために走り回る。
いつ終わるか知れない戦いに臨んでいる兵隊たちが力尽きないよう、次々に提供せねばならず、烹炊所の中もまた戦場だった。
一方で、戦闘兵たちと同じ場所に赴き、戦闘の様子を記録するのも主計科の仕事で、宮崎さんは主計長として、その危険な任務を全うすべく外へ出た。
こんなとき、ぼくのような新兵は誰よりも無力で、理由は何であれ、医務室に宮崎さんがいてくれたことは幸運としか言いようがなかった。
ぼくは宮崎さんが無事に戻ることを祈り、作業に没頭した。
敵艦からの砲撃と思われる爆音はやむことなく続き、ぼくらは必死の思いで足を踏ん張り、ひたすら握り飯を作っていた。