桜花舞うとき、きみを想う
スッと襖の開く音がして、見ると、若い女性が立っていた。
真っ白な足袋が、そろりそろりと近づき、やがて枕元に正座した。
「素子といいます。お体が良くなられるまで、中園さんのお世話をいたしますので、遠慮なく何でもお申し付けください」
先程までここにいた夫人と聞き間違えそうなほどよく似た、けれど少し張りのある声だった。
鈴が鳴るような、きらきらとした、凛とした声の若い女性。
娘を寄越す、と言っていたから、彼女がそうなのだろう。
「どうして、ぼくの名前を」
「だって救出されたとき、軍服を着ていらしたから」
「ああ、そうでした」
これが、ぼくと彼女との初めての会話だった。