桜花舞うとき、きみを想う
その日、そのまま兵舎に帰されたぼくは、同室の仲間が訓練から戻るまでの間、家族に宛てて手紙を書いた。
空襲の報せに胸がざわつきましたが、みなさんご無事とのこと安心いたしました。
こちらは元気にやっています。
どうかご心配なさらずに。
そんなようなことを、つらつらと書き連ねたと記憶している。
当たり障りのないことしか書けなかったが、余計な心配をかけないため、これでいいのだと自分の心に言い聞かせた。
広田にも書こうと思ったが、もらった手紙に戦地へ行くと書かれていたことを思い出し、やめた。
「あーあ」
ぼくは鉛筆を机に投げ出し、椅子の背もたれに体重をかけて凝り固まった背中を伸ばした。
まだ微かに残る体の震えは、練習機の衝撃のせいか、それともその後の清水さんとの話のせいか。
気分転換に外を眺めようと、立ち上がった。