桜花舞うとき、きみを想う
「礼二、座らんのか」
「はい」
ぼくは父に再び促されて、ようやく腰を下ろした。
「お父さん、一体何事なんですか」
「話は後だ。さあ、いただこう」
茶碗に山盛りの白飯が、艶々とうまそうな照りで食欲を増幅させる。
ぼくは、どうにも妙な気分のまま箸を取ったが、久しぶりの白米は甘くもっちりしていて、うまかった。
噛むほどに広がる甘みは、食べ物のありがたみを知った身では、なおさらにうまい。
ぼくは夢中で味わううちに、一体この上機嫌の裏で何事があったのかと気にしていたことなど、すっかり忘れた。
やがて箸が落ち着いた頃、見計らったように父が口を開いた。
「母さん、あれを礼二に」
父の言葉を受け、はい、と母がぼくに渡したのは、さっき母が手にしていた茶封筒だった。