桜花舞うとき、きみを想う


『遠く離れていても、ひとときもあなたを忘れることはありません』

思わず赤面するような一文で始まる愛の言葉のすべてに、きみの息吹が感じられた。

『あなたのいない日々は拷問のよう』という言葉に笑い、『会いたくて、寂しくてたまらない』の文字が愛おしくて、何度も何度も読み返した。

『千疋屋の西瓜を買ってくださる約束をしたのだから、西瓜の季節には一度帰って来てね』

こんな、なんともきみらしい、かわいいお願いは聞き届けてやれそうにないけれど、いつか休暇がもらえたときには、思う存分甘やかしてやろうと思った。



『愛する旦那様へ 妻より』



最後に記された言葉を、ぼくは指でなぞった。

きみがぼくを想うより、ぼくのほうがずっときみのことを想っていると、今すぐに伝えたいと思ったとき、封筒からひらりと何かが舞い落ちた。

拾い上げるてみると、それは、きみが満面の笑みを浮かべている写真だった。

「やあ、これはいいや」

思わず声が出た。



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