桜花舞うとき、きみを想う


「実はおれ、昨日呼び出しを受けて、志願するかどうか聞かれたんだ」

山里くんは静かに言った。

「おれは三男だし独身で、もともとそのつもりだったから迷わなかったけど、でも、しない人もいたよ」

人に聞かれてはまずいと思ったのか、山里くんは周囲に人がいないことを確かめた。

「最初に言われたんだ。家族がある者や長男は除外するって。それでも志願したい者のみ、一歩前へって。だったら、前に出ない人は志願しないってことだろ?事情があるってことだろ?」

山里くんは、悔しそうに下唇を噛んだ。

「なのに……」

その先は、鈍感なぼくでも想像がついた。

「何度も何度も、聞くんだ。志願する者は前へって。全員が出るまで」

「そう、なんだ……」

気の利いたことが言えたらよかったが、こんなとき、どう言葉をかけるのが正解なのかわからなかった。

「だからさ!」

山里くんは弾かれたように体を起こし、ベッドに座っていたぼくの両肩を正面から掴んだ。



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