桜花舞うとき、きみを想う


『礼ちゃん、もっと飛ばしてちょうだい』

『よおし、見てろよ、今度こそ』

両手を擦り合わせると、竹とんぼが、透き通る青空に吸い込まれるように、勢いよく舞い上がった。

けれど、歓声を上げるきみの笑顔が、一瞬にして曇った。

竹とんぼが、ぼくの足元にぽとりと落ちたのだ。

『どうして上手に飛ばないの?落ちちゃ嫌!』

『おかしいなあ。前はこれでよく飛んだのに。泣くなよ、ほら、お食べ』

悔しそうに泣きながら地団駄を踏むきみの、小さな手に、カルミンを握らせてやった。

『おいしいね、薄荷』

ほら、この顔だ。

ぼくは、きみが泣いた後に見せる照れたような笑顔が好きだ。

その笑顔を守るためなら、ぼくは、何でもできる。

――――



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