桜花舞うとき、きみを想う
またいつもの夢を見た。
けれど、いつもと違うのは、夢の中のきみが子供ではなかったことだ。
幼馴染としてのきみではなく、妻としてのきみが竹とんぼが飛ばないと泣く様は少し滑稽だったが、久しぶりにきみと対面した気分になれて、いつになく穏やかな気持ちで目覚めた。
ぼくに飛行訓練の命が下ったのは、そんな朝のことだった。
数時間の講義を終え、以前、清水さんが座った席に座る。
ぼくが座っていた席には、教官である清水さんが座った。
(飛行訓練が始まるということは、とうとうぼくも特攻隊員の仲間入りか)
最初こそ、そんな感傷に浸ってみたが、いざ自らの操縦で機体が空を舞うと、それまでの暗い気持ちはどこへやら、ぼくは目の前に広がる空と海の壮大さに、心躍らせた。
(なんて美しいんだ……!)
清水さんに乗せてもらったときは、尋常でない上昇と降下の繰り返しに、景色を楽しむ余裕など皆無だった。
それが今、形容し難い開放感とともに、ぼくは鳥になった。