桜花舞うとき、きみを想う
どうも腑に落ちないが、的を射ていないこともなく、ぼくは否定することができなかった。
黙って小さく口を尖らせていると、後片付けをしていたきみが、ちゃぶ台を拭きながら言った。
「お義父さま、それじゃ礼二さんに嫁いだわたしが損しているみたいだわ」
「アヤちゃんにとっては損だがね、礼二にとってはもったいないくらいの嫁さんだよ」
「ふふ。ですって、礼二さん」
きみがいたずらっ子の目で、ぼくを見た。
「そうは言うけどね、お父さん、ぼくだってやるときはやるんだよ」
ぼくは、ちらりときみに冷ややかな視線を送って言った。
「ほぉ。いつそんなお前を見られるか、楽しみにしてるぞ」
「ひどいな、全く信用されてないんだから」
あははは、と明るい笑い声が響いた。
そこへ、洗い物を終えた母が扇形に切られた西瓜を大皿に盛って来た。
「さ、縁側で涼みながら食べましょう」