桜花舞うとき、きみを想う


首を傾げるぼくを見て、実はね、と前置きして、きみが言った。

「今夜のお米も西瓜も、お義父さまの会社の専務さんからのいただきものなの」

「ええ?だけど専務には祝い金をいただいたろう」

「そうだけど、お義父さまが仰るには、すべての部下に同じようになさっているらしいわ」

「すべての部下に?」

間抜けな顔で驚くぼくを見て、きみがまた笑った。

「庭にはできなくっても、わたし、また千疋屋の西瓜を食べたいわ」

夢を語る子供のように、きみの声は弾んでいた。

「それなら、ぼくが大学を卒業して働くようになったら、給金で買ってやるよ」

「本当?」

「日本橋の千疋屋に、西瓜でも葡萄でも、好きな果物を好きなだけ買いに行こう」

「約束ね」

「ああ、約束だ」



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