桜花舞うとき、きみを想う
やがて母が戻って来た。
「おかえりなさい」
「礼二、帰ってたのね。三谷さんのこと、アヤちゃんに聞いたでしょう。お母さん、奥さんに付き添ってあげたいから、お夕飯の準備したらまた行くわね」
淡々と話す母の顔は、憔悴しきっていた。
「そう。じゃあぼくも一緒に行って、挨拶をするよ」
「そうね、そうしてちょうだい」
戦死した三谷寛さんはぼくより3つ年上で、幼い頃によくかわいがってもらった。
その人が、もうこの世にいない。
死とはこんなにも突然、やって来るものなのか。
家族を置いて入隊して戦死するなんて、悲惨な人生だ。
そんなことを思ってしまうぼくは、やっぱり非国民なのだろうか。