桜花舞うとき、きみを想う
突然のぼくの告白に、父も母も目を丸くしていた。
正座で向かい合うぼくと両親の間に、しばしの沈黙があった。
どこからか、涼しげな風鈴の音が聞こえた。
同時に、穏やかな熱を帯びた風が、縁側から夏の訪れを告げた。
「あらまあ、驚いた。だって礼二ったら、今までそんなこと一度だって…ねぇ」
沈黙を破った母が口に手を当てて心底驚いたふうに言うのを、ぼくは顔を赤らめて聞いた。
「相手は誰なんだ」
ぼくは、下手なこと言わなきゃ良かったと後悔しながら、
「石岡さんとこの、アヤ子さんです」
と蚊の鳴くような小さな声で言った。
母がまた、あらまぁ、と呟いた。