桜花舞うとき、きみを想う
学徒出陣から1年経過し、大学内でもますます戦時色が強まった。
学生たちは日々の戦況に興味津々といった様子で、毎日のようにあちらこちらで討論し合う場面が見られた。
その頃、ぼくは講義が終わると、すぐに帰宅していた。
そのせいか、この戦争がどの程度、ぼくら学生に影響をもたらすのかという認識が低かった。
ある日のことだ。
いつものように帰宅しようと講義室を出ると、
「おい、中園」
と、同級生の広田に呼び止められた。
「俺たちも、そろそろらしいぞ」
広田は、やけに深刻な顔をして言った。
「そろそろって、何がだい」
ぼくがそう言うと、広田は苦笑いを浮かべた。
「きみは相変わらず呑気だな。この国の現状には興味なしかい」