桜花舞うとき、きみを想う
「恥ずかしながら、生き長らえて参りました。中園さんに申し訳が立ちません」
「恥ずかしいことありませんよ。あなたがこうして帰って来ることを、あなたのご両親はどれほど祈っておられたか」
俯く杉田さんに母がそう言うと、杉田さんは弾かれたように顔を上げ、痩せて窪んだ目を見開いた。
「今日まで多くの遺品を届けて参りましたが、そんな風に言って頂くのは初めてです」
訪問先では常に遺族の冷たい視線が自分の体を突き刺した、と杉田さんは言った。
なぜうちの子が死んで、お前が生きている。
そう口に出されることもあれば、目がそれを物語っていると感じたこともあった。
「本当を言いますと、今日もきっと同じことを言われる覚悟でお訪ねしました。よかれと思って始めたことですが、こんなこと何の意味もない、誰の救いにもならないと思い始めていたものですから」
時折言葉を詰まらせる杉田さんの目から、大粒の涙が零れ落ちた。
母は杉田さんの肩にやさしく手を添え涙を流し、父は腕を組んで唇を真一文字に結んでいた。
ぼくはそれを見て、生きて帰ることの苦悩を知った。