桜花舞うとき、きみを想う


「俺が今から石岡に行って、話をして来る」

おもむろに立ち上がろうとする父を、母が引き止めた。

「あなた、アヤちゃんはまだ16ですよ」

「それがどうした」

「お嫁に出すなんて、早すぎますよ」

「お前は、礼二の見合いも早すぎるだの、そんなことばかり言うじゃないか」

父は母を振り払い、立ち上がった。

「見合い話を進めるか、石岡との話を進めるか、どちらかだ」



ぼくは、あまりの急な展開に驚いた。

まさか父が、専務のお嬢さんとの縁談よりもぼくの思いを優先して動いてくれたことにも、驚いた。

「お、お父さん、それならぼくが自分で行って来ます」

言い合いを続ける両親に、ぼくは思わずそう口走っていた。



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