アゲハ~約束~
「―――でもね。」



 しばらく黙り込んでいると、悟が顔を上げて、にかっと笑った。



「なんだか、安心したよ。・・・なんでかな。美佐子が・・・帰ってきてくれたような気分だ。」

「・・・そうですか。」

「ああ。・・・これ、他の遺族にも配ったのかい。」

「はい、フィルムに入っていた分は全部。」

「じゃぁ、配られた家族はみんな嬉しかったはずだよ。・・・そりゃぁ、直前までこんな笑顔だったのにって思うと悲しいけどね。・・・直前までは、こんな笑顔でいてくれてたんだって、それがわかるだけで、安心する。」



 彼は、本当に嬉しそうな笑みを浮かべて、写真をなでた。



「・・・ルフナは、あんたのことや他のたくさんの人を、助けてくれたんだな――・・・」

「・・・え?」



 彼がそっとこぼした言葉に、アゲハたちは顔を上げた。



「・・・ルフナを知ってるんですか?」



 自分たちの口からは、ルフナという言葉は出していない。

 なのに、彼からその名前が出てくるなんて。

 驚いたように彼を見つめると、彼は目を丸くした後、「聞いてなかったかい」と、笑った。


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