アゲハ~約束~
「・・・それで?」

「え?」



 そこに、冷めた子供らしくない声が聞こえたのは、彼がちょうどそのおにぎりを食べ終えたころだった。

 声を発したのはアゲハで、みなが驚いたように彼女に視線を向ける。

 アゲハはそれに若干の居心地の悪さを感じたが、さして気にするわけでもなく、彼を横目でちらと見て、尋ねた。



「・・・何故、そのフリーのカメラマンが人見学園の内輪のパーティーで誰よりも肉をむさぼっているのかしら。」

「・・・確かに。」

「そういえば。」



 あまりに彼が必死で食べているから、当初抱いていた疑問を誰もが忘れていた。


 ただ、アゲハだけが覚えていた。


 その問いを尋ねられると、ルフナはなさけなく笑う。

 そして、傍にいた園長に視線を向けて、頭を下げた。

 園長はそれに苦笑いを返すと、ため息混じりに、その理由を語る。



「・・・行き倒れてたのよ。」

「・・・行き倒れ?」

「今日の肉の買出しに行くのに、ほら、佐々木商店の横の裏道あるでしょう。そこを通ったら、そのウォーカーさんが倒れてて。何事かと思って園までつれてきたら、三日何も食べてないっていうんだもの。驚いちゃった。」

「金、なくて。」



 常に、貧乏だから。彼はそう、なぜか自慢げに語った。

 自慢できることではないのに。



「・・・」



 それをきいて、アゲハは内心でため息をついていた。

 ああ、また園長のおせっかい癖がでた。



 こうなったら、きっと次にくるのは・・・


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