アゲハ~約束~

3.

 ルフナは働き者だった。

 掃除、洗濯はもちろん、料理が得意で、どこの国の料理だかわからないような料理を、たくさん作って子供たちを喜ばせた。


 子供を笑わせるのが大好きで、そして素直な人だった。


 子供相手に、本気で笑い、時には本気で叱った。

 そして必ず、叱った後には強くその子供を抱きしめた。



 子供たちだけじゃない。年長のものにも、彼は人気が出た。


 人見学園では、高校生までの子供を預かっている。その、中高生の間でも彼は人気者だった。

 彼が語る、世界中の話。見せてくれる、世界中の写真。

 胸が躍るようなその話に、心を馳せた。



 また、彼はとてもよく人の話を聞く人で、だから、何かと悩みを抱えた思春期の青少年たちにとって、安心できる兄貴分となったのである。


 夏梅なんて、すきあらばルフナの無精ひげを剃って、髪をムースでびっしりセットしてやろうと、他数人の同志たちと一緒に機会を狙っている。

 幸人も、まぁまぁいい奴かなと、彼を「家族」の一人として認めつつあった。



「だからさぁ―――・・・いい加減お前も、話くらいしてみたら。」



 いつもどおり「読書場」で本を読んでいるアゲハの隣に腰掛けて、つんつんと肩をつつく。

 アゲハはそれにちらと視線を向けると、それだけでまた本に目を戻す。



「別に・・・いるのには反対してないでしょ。」

「だからさぁ、もうちょっとこう、フレンドリーに。」

「―――どうせすぐいなくなるじゃない。」



 私には、関係ないわ。

 と、彼女は静かにそういった。



「・・・」



 まぁ、そうなんだけどさ、と、幸人は頭を掻く。


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