アゲハ~約束~
水色の壁紙に囲まれた廊下には、家族の写真がたくさん貼られている。
女性は三人をリビングに通し、そうして、一番目立つところに置かれている写真の前にいざなった。
『キャロルの、友達だったの?』
彼女は、とても優しい口調、そしてとてもやさしい英語で尋ねた。
アゲハが、はいともいいえともいわずにただ黙って写真を見つめていると、女性は苦笑いして、ため息混じりに言う。
『―――キャロルは、死んだわ。三ヶ月前の、飛行機事故で。』
そういって、彼女は、まだ傷がいえていない笑顔をアゲハに見せた。
―――それが悲しくて、アゲハは目を伏せ、そして手に持った封筒をそっと差し出す。
目を丸くしてその封筒を受け取った彼女に、アゲハは言った。
『私の知り合いも、その飛行機に乗っていました。』
『・・・え?』
女性の顔が、すこし、変わった。
手に持った封筒と、アゲハの顔の間で、視線を行き来させている。
『彼は写真家で・・・飛行機に乗る前に、必ず同じ便に乗る人を探しては写真を撮っていたんです。』
最後の笑顔を取りましょうといって。
飛行機は、いつ落ちるか判らない。
だから、彼は、必ず写真を撮り、飛行機に乗る前にその写真を郵便で日本に送っていた。
それは、決して後ろ向きな行為ではない。
女性は三人をリビングに通し、そうして、一番目立つところに置かれている写真の前にいざなった。
『キャロルの、友達だったの?』
彼女は、とても優しい口調、そしてとてもやさしい英語で尋ねた。
アゲハが、はいともいいえともいわずにただ黙って写真を見つめていると、女性は苦笑いして、ため息混じりに言う。
『―――キャロルは、死んだわ。三ヶ月前の、飛行機事故で。』
そういって、彼女は、まだ傷がいえていない笑顔をアゲハに見せた。
―――それが悲しくて、アゲハは目を伏せ、そして手に持った封筒をそっと差し出す。
目を丸くしてその封筒を受け取った彼女に、アゲハは言った。
『私の知り合いも、その飛行機に乗っていました。』
『・・・え?』
女性の顔が、すこし、変わった。
手に持った封筒と、アゲハの顔の間で、視線を行き来させている。
『彼は写真家で・・・飛行機に乗る前に、必ず同じ便に乗る人を探しては写真を撮っていたんです。』
最後の笑顔を取りましょうといって。
飛行機は、いつ落ちるか判らない。
だから、彼は、必ず写真を撮り、飛行機に乗る前にその写真を郵便で日本に送っていた。
それは、決して後ろ向きな行為ではない。