アゲハ~約束~
「・・・うん。いい写真が撮れた。」



 ありがとう。彼はそういって、アゲハに手をさしだす。



「・・・」



 アゲハは黙ったまま、その手に、自分の手を添えた。

 その添えられた手を、ルフナは強く握り、微笑む。



「・・・アゲハは、すごく、綺麗だ。」

「なっ・・・何を、いきなり・・・」

「そう思ったから。」



 手を振り払われても彼は気にせず、ニコニコ笑顔のまま一歩ずつ、アゲハに近寄ってゆく。

 なぜかアゲハは、動くことが出来ず、そこに固まって彼が近づくに任せていた。



「・・・綺麗な、名前。オレ、アゲハ蝶好き。」

「あ、ああ・・・」



 なんだ、名前のことか。

 まだ高鳴っている胸を押さえつつ、アゲハは、ようやく彼に表情を返す。

 といっても、苦笑いだが。



「さなぎから、とても綺麗な蝶に変身する。それが、約束されている。」



 ルフナは、またそっとアゲハの髪に触れる。

 だが彼は、そこで、言ってはならない言葉を口にした。



「ご両親は、その約束を君にもって思って、同じ名前をつけたんだね。―――とても愛してたんだ。」

「――――――・・・」



 その言葉を、聞いた途端。



 アゲハの中で、何かが止まった。

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