アゲハ~約束~
 胸の早い鼓動も、すっかりおさまって。

 なにか冷たいものが通り過ぎる。



 ―――この人は、愛されて育ってる。



 彼の素直さからそれがわかって、判ったとき―――・・・

 どうしようもない、苛立ちがアゲハを襲った。



「っ・・・」

「アゲハ?!」



 彼の胸を押しのけて、アゲハはルフナから離れた。



「―――わたし、あなたみたいな人大嫌い!」



 そういい残して、そこを、走り去った。

 心の中に、一瞬にして、いつもはしまいこんであるどろどろしたものが戻ってくる。


 どうしてあの人たちは、迎えに来ないの?


 どうして、守れない約束をしたの?


 どうしてあんなに愛されて素直に育つ人がいるのに、私は―――・・・





 嫉妬だった。




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