アゲハ~約束~
 どうして私は、なんて、ひがみだってわかっていた。

 だけど、どうしてもそういうことを考えてしまう自分がいた。

 ばかばかしいくらい自分が子供っぽいってわかってる。

 きっと幸人が聞いたら、大人気ないぞと笑うのだろう。


 だけど。


 いやなんだ。

 あんなふうにまっすぐな人が、嫌いだ。




 自分の心のどろどろした部分が、余計みにくく見えるから。



 アゲハは、走って、そこから、また皆がいる広場に戻った。

 本当はそこに戻りたくもなかったが、そこしか行く場所がなかったから。



「あらアゲハ。どこに行ってたの?」



 園長が微笑みかける。


 ―――何も聞かれないのが、救いだった。


 すぐにルフナも追いついて、アゲハを、戸惑った表情で見ていた。

 ルフナはおおきくため息をついて、そこにしゃがみこんだ。

 そんなルフナを見なかったフリをして、アゲハは、園長の隣に腰掛ける。



「・・・ん?」



 優しく顔を覗き込む彼女に、アゲハは、しばらく黙り込んだ後、小さな声で呟いた。



「・・・私・・・あの人が嫌いです。」

「・・・あの人・・・ウォーカーさん?」

「はい。」

「・・・どうして?」



 優しい声で、彼女は尋ねる。

 アゲハは、ゆがんだ表情のまま答えた。



「・・・素直すぎます。まぶしいんです。・・・あの人を見ていると、なんだかすごく、自分が、ちっぽけに思えて・・・」

「・・・」



 園長は、それを聞くと優しく微笑み―――・・・アゲハの頭をなでた。



「・・・あなただって、そうなれますよ。」

「・・・なれません。」

「なれます。・・・大丈夫。あなたは・・・優しい子だから。」



 大丈夫。大丈夫。

 彼女は、何度もそう繰り返した。



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