アゲハ~約束~

7.

 機会は案外すんなりとやってきた。

 ルフナが、自分の仕事である皿洗いをしているときだった。


 誰もいなくなった食堂に、アゲハが現れたのだ。



「・・・手伝う。」

「あ・・・ありがとう。」



 憮然とした表情のまま、彼女はルフナの隣に立って、彼が拭いた皿を食器棚に戻し始めた。

 彼女から近づいてきてくれたのは嬉しいが、ルフナには、自分から何かをいっていいものかが分からない。


 また傷つけてしまいそうで怖くて、ただ黙って皿を拭き続ける。


 すると、アゲハがぴたりと動きを止めた。


 何事かと思ってルフナも動きを止めると、やがて彼女は、小さく、ささやく。



「・・・あなた・・・綺麗な写真を撮るのね。」

「え・・・あ、うん。ありがとう。」

「・・・素直だから・・・あんな写真が取れるのよ。」

「・・・そう、かな。」

「・・・うらやましい。」



 ぽつり。


 彼女がこぼした言葉が、ルフナの胸の水溜りに落ちて、波紋を広げる。静かに、ゆっくりと。



「・・・今日は・・・ごめんなさい。・・・嫉妬してたの。あなたの素直さに・・・」

「――――・・・」



 この子は。



「・・・まぶしかったの。」



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