アゲハ~約束~
「だからさ。あんたがアゲハを好きなのか、すごく気になる。」

「どうして?」



「あんたはいずれいなくなるから。」



「・・・」

「どうせ、ここに定住はしないんだろう?いなくなるだろう?そのときにさ。アゲハが傷つかないようにしてやってほしいわけ。」



 だから、どうなの?

 三度目になる問いかけ。

 それには、ルフナも、真面目に答えた。



「・・・ごめんね。・・・正直、自分でもまだよくわからないんだ。」



 彼は小さな声でそういって、アゲハの額に手を伸ばした。

 そこに乗る前髪を横にはらって、優しくなでる。



「笑顔が見たいとか・・・安心させてあげたいとか・・・そう思う。でもときめきとかどきどきとか、そういうのはどっかなくて・・・すごく・・・穏やかな気持ち。」



 これがなんなのか、自分でもよくわからないんだ。



「ただ――・・・傍にいたい。」



「・・・」

「・・・それじゃ、駄目かな。」

「・・・ふーん。」



 なるほどね、と、言って、幸人は立ち上がった。

 椅子を元の場所に戻して、部屋を出ようとする。



 アゲハのこと、頼むな、と、軽く言って。



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