アゲハ~約束~
「・・・ずっといてくれたの?」

「うん。・・・誰か傍にいたほうが、心細くないだろうと思って。」



 ルフナは、そういって微笑むと起き上がるのを手助けして、薬を差し出す。

 薬を飲むと、またアゲハは布団の中に戻った。



「・・・その・・・ありがとう。ルフナ。」



 布団で顔の下半分を隠して、照れ隠ししながら彼女が礼を言うと、ルフナは嬉しそうに微笑んでアゲハのおでこに、手を当てた。


 彼の冷たい手が、ひんやり、気持ちいい。



「寝ていいよ。・・・オレ、ずっとここにいるから。」



 薄暗い部屋。

 アゲハに、ルフナの表情はあまり見えない。



 けれど何故だろう。




 ―――笑っているんだろうなと、判った。




「・・・うそつき。ずっとなんて無理でしょう?」



 おでこに当てられた手をそっとのけて、ため息混じりにアゲハは彼の言葉をいなす。


 けれどルフナは、アゲハの手をぎゅっと握って、首を振った。



「ここに、いるよ。」

「・・・」



「ここにいる。・・・朝、アゲハが目を覚ますまで。」



「・・・変な人・・・」


 期待、してないから。


 彼女はそういって、また目を閉じた。



「うん。・・・でも、ここにいるから。」



 ルフナは、その手を両手で包み込んだ。




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