アゲハ~約束~
「うそつき!」



 アゲハはかすれた声で叫んだ。



「嘘じゃない!結局嘘をつくんじゃない、約束なんて、守らないじゃない!!」



 ホールに、アゲハの声だけが響く。

 アゲハはその場にへたり込み、ぐしゃぐしゃの髪で顔を覆うようにうずくまった。

 何故自分がこんなにも傷ついているのかがわからなかった。



 だって、信じないはずでしょう?



 約束なんて、信じるつもりはなかったはずでしょう?


 なのにどうして彼が一方的にした「約束」に、こんなに心を荒立たせるの。





 ―――傷つくの。





「っ・・・」



 頬を、熱いものが伝ってあごにたまって落ちてゆく。



 来ない。



 あの人は、きっともう戻ってこない。




 夜通し手を握ってくれていた、あの、骨ばった手。



 いつでも絶やさなかった、笑顔。









 きっともう、戻ってこない。


 それに絶望して。






「ルフナ!!!」






 怒りに任せて、名前を叫んだ。









 ―――そのとき。


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