アゲハ~約束~
 すねたように語尾を延ばして、それから彼の膝に頭を乗せて寝転がる。



「すねないでよ。」

「すねてません。」

「・・・いつか必ず言うから。」



 彼は困ったように笑って、アゲハの髪を手で梳く。

 それが、心地よくて、アゲハはそっと瞳を閉じた。




 ―――こんな穏やかな幸せは、初めてだった。




 今までが激動だったというわけではないけれど、こんなに、心に染み入るような幸せって、感じたことがなかった。


 幸せって、こういうものだと、教えられた気がした。


 今まで得られなかったものを、みんな与えられているような気がした。

 




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