アゲハ~約束~
「・・・アゲハ。飯、食えよ。」

「・・・」

「・・・アゲハ。・・・このままじゃアゲハが死んじゃうよ。」

「・・・」

「・・・外、出るぞ。今日、晴れてるから。」

「・・・」



 幸人が腕を引いて、立ち上がらせる。

 けれど彼女はベッドからおちるように降りただけで、今度は床にへたり込む。


 そこに生気はなく、表情もなかった。


 すべてが、止まっている。


 今のアゲハは、ただ、心臓が血を送り出すだけの人形。


 思考すら、止まっているのだ。



「―――――・・・」

「―――いい加減にしろっっっ!!!」



 ―――パンッ!!!


 アゲハの頬を、幸人の手のひらが叩いた。

 ひりっとする痛みと、熱さが、アゲハの頬と、幸人の手。


 両方に残った。


 瞬間、ゆらっとアゲハの瞳が揺れて、光が、戻る。

 彼女は叩かれた頬を手で押さえつつ、幸人をゆっくりと見上げた。

 ――――幸人は、泣きそうな顔をしていた。


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