アゲハ~約束~
「お前だけが悲しいと思ってんのかよ!世界中に悲しんでる人いるんだよ!俺達だって悲しいんだよ!!!」


 ――――だけど何よりも悲しいのは。


 君が泣きもせずただ人形のようになってしまったこと。



「―――泣けよ!わめけよ!好きなだけ暴れろよ!だから・・・だから、一人で、そんな、風に・・・」



 幸人は、崩れ落ちた。

 座り込むアゲハの、両の二の腕を強くつかんで。

 夏梅は、泣きじゃくってアゲハの肩をゆすった。

 弱く、そして、次第に強く。



「アゲハ・・・泣いて。このままじゃ、アゲハ、壊れちゃう・・・」

「泣いてくれよ!・・・頼むから・・・っ・・・」

「――――・・・」



 ―――ドクン。


 アゲハの心臓が大きく一度波打って、瞬間、アゲハの全身に暖かい血を送り出した。



「あ―――・・・」



 思考が、回りだす。

 身体が、まだぎこちなくも、それでも、動く。

 ―――理解する。


 ルフナが、いない。



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