アゲハ~約束~
「約束を・・・守ってくれなかった・・・」



 自分の両腕をつかむ幸人の胸に倒れこんで、子供のようにわめいた。



「結局ルーだってうそつきじゃない!!!!」

「アゲハ!」



 叫んだとき、夏梅が幸人を押しのけて、アゲハの身体を抱きしめた。

 アゲハは、その身体にしがみつく。



「戻ってきてくれない!あの言葉だって、一度も―――・・・」



 そう。

 愛しているという言葉だって、彼は、いってくれなかった。

 大切なときに言うといったじゃない。

 ねぇ、大切なときって。


 今じゃなければ、いつなの?


 ねぇ。


 何とか言って。


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