アゲハ~約束~
「・・・ルフナ?」



 そのとき、急に、声が聞こえた気がした。

 あの時の、彼の言葉。



 ――――俺ができないときには、アゲハに代わりにやってもらおうかな――――



「・・・それが・・・あなたの願い?」



 この写真を、遺族に、届ける。

 それを、あたしにやれっていってるの?



「・・・」



 アゲハは、充電器にはまっている「ルフナの携帯」を手にとって、見つめた。

 充電はしているけれど、なんとなく悲しくて、電源を入れる気になれなくて。

 ――そのまま電源を切ったままにしていた。

 それを見つめて。



「―――――・・・」



 何かを念じるように、それをおでこに当てて、目を閉じた。


 ―――そうだ・・・そうして・・・


 アゲハは、立ち上がった。

 その足元には、72枚の笑顔が散らばっていた。




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