恋花よ、咲け。




_____。

満員電車脱出後
すでに太陽など沈んでいて
足は早まった。


右手には 今たったひとつ
高木と俺を繋ぐ 数字がある。


大丈夫だろうか?


風邪は 良くなったのかな?


心配は確かに募っていくのに
声を聞ける喜びがはるかに勝っていて
その想いだけで 家に向かった。


「あ、健吾おかえり。
今日は早かったね。」


俺のただいまより早く 母さんが言う。


「あぁ、ただいま。
ちょっと用があったから 早くなった。」


キッチンから顔を出して優しく笑った。


「あら、そう。
なら 先にお風呂に入ってくれない?
まだご飯に時間がかかりそうで。」


全く、どうせまた
誰かとの世間話に夢中だったんだろう。


「分かったよ。」


階段を上がりながら言うと
「全く もうちょっと優しく言えないのかな。」
何ていう文句が聞こえてくる。


特に気にも止めず すぐに部屋に入った。




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