恋花よ、咲け。
「俺の声 ちゃんと聞いてたか?」
小さな小さな声で
私にあなたが聞いた時。
_____パンッ。
わっちゃんの出ている短距離が始まった。
クラスだけでなく
会場全体がわっと沸き
それを静寂と感じた私はきっと
頭がいかれていた。
「…聞こえたよ、何よりも強く。」
つい 真剣な顔をしてしまう。
だって あなたの耳にじゃなくて
あなたの心の奥に届けたいから。
「だって 約束だったじゃない。」
そう 約束だから。
あなたが私にした 最初の約束。
_____。
「高木 800mがんばれょ!」
その日 職員室に用があった私たちは
たまたま階段で一緒になった。
「あ ありがとう。
だけど 一位になれるかどうか…。」
沢山のノートを抱える私に
気を使ってか ゆっくり下りる弘也。
「大丈夫だよ。
バスケって めっちゃ走るじゃん。
体力なら 自信もっていいでしょ。」
「いゃいゃー…
そんな簡単に言うけれど。」
弘也がタンッと身軽に
5段の階段をジャンプで飛び越した。