恋花よ、咲け。
フラれた。
それは 堪らなく悔しくて
限りない悲しさが俺を襲った。
だが 分かりきっていたことだ。
それを覚悟で 伝えたはずだ。
「おい健吾 遅いぞ!」
大希はすでにグラウンドで グローブを片手に
苛立ちを隠せずに 立っていた。
「わりぃ。」
別に 泣いたわけでもない。
何かを話したわけでもない。
だけど大希は 全部分かってたんだ。
「…そんなしけた顔してる健吾と
野球するつもりなんてないんだけど。」
部室の中に荷物をおき 着替えを始めた。
ドアを開けたままの着替えは
あまりに寒くて気が向かなかったけど
上がりきった体温を冷ますには
ちょうど良かった。
「……ダメだった。」
「そんなの分かる。
その顔で 上手くいってるわけがない。」
「………だよな。」
着替えを済ませると
すでにキャッチボールを始めている
部員の横に並び 大希を呼んだ。
「早くやろうぜ。」
大希は呆れた顔で ボールをグローブに叩きつけた。