恋花よ、咲け。
さっきの真面目な顔が嘘みたいに
柔らかく微笑んだ。
そっか そうなんだね。
「少しずつ 健吾を見ていくんだ。」
ついているけど ほとんど意味の無い外灯。
そっと私たちを照らす月明かり。
空の遠い彼方で輝くオリオン座。
吐く息はきっと真っ白だ。
「………あのさ。」
「ん?」
眠ったままの舞未さんを隣に
静かな声で続けた。
「…もし 白馬の王子さまがいてさ
今のお前を拐いに来たら どうすんの?」
「はっ!?」
私は思わず吹き出した。
「なに言ってんのさ高1が。」と付け足した。
だけど弘也は真剣に「答えろ。」とだけ言った。
だから私は正直に
「…拐われてもイイかもしれない。」
と 少し笑みを浮かべて答えると
弘也はにっと笑った後に
すっかり乾いた涙を拭い こう言ったんだ。
「…なら俺 お前の白馬の王子さまになる。」