恋花よ、咲け。
隼揮から目を離し
何かを考え込んでいる弘也に
隼揮がまた 危なっかしい言葉を投げる。
「またあれか? ……略奪愛か?」
"またあれか?"だと……?
弘也がまたビクリと反応し
隼揮を先程よりも力強く睨み付けた。
「……お前に何が分かると
さっき聞いたではないか。
何が分かる?」
弘也が優しく笑う。
だが その瞳は
微かな悲しみを込めていた。
隼揮は黙り込み
「いいや、何でもない。」とだけ言うと
それ以外は何も言わずに
図書室を出ていった。
「……弘也、大丈夫か?」
南が俺の顔を覗き込み
申し訳なさそうに続けた。
「悪いな。 俺があんまり言ったから。」
南はきっと
本気で悪いと思っているんだろう。
「すまなかった。」
何度だって謝ってくる。
「いいよ、お前は気にするな。」
南の単純な心を知っていることから
やはり 無理に問い詰めたりは出来ない。
だけど 南はそこに居づらかったのか
「じゃあ、俺もそろそろ行くな。」と言って
図書室を出ていった。