恋花よ、咲け。




見かけるだけで高鳴る鼓動。


赤みを増す頬。


上手く言葉を発せられない口。


真っ白になる頭。


思いとは裏腹に 避けてしまう体。


今だってそう。


器用ににこって笑えたらイイのに
それを出来ない私は意気地無し。


ましてや 慌てて目をそらすなど
ただ感じが悪いだけ。


「はぁー…。」


零れる溜め息は
一体今日で何度目だろうか。


「はぁー……。」


だが、止めどなく溢れる溜め息は
止めようと思って止められるものではなかった。


無意識のウチに
次から次へと溢れてくる。


すると、呆れたように奈穂を見た潤が言う。


「奈穂さ、もっと頑張ってみなくちゃ。
すぐに離れてっちゃうよ?
大体 あんな人気者を好きになるからだよ!
きっと苦労するぞー?」


潤は、職員室の前で立ち止まり
「ちょっと待っててね。」と言って
職員室の扉を開く。


すると、ぶわーっと
冷たい空気が顔にあたり
暑い廊下を恨めしく思う。




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