恋花よ、咲け。




誰もいないやたらと長い廊下。


綺麗にされた中庭が見える。


そこからさすオレンジの日差しが
より一層 緑を輝かせる。


早く教室に戻りたい。


と言うのが正直のところだ。


そんな事を考えていると
潤が慌てて職員室の扉を開き
「ごめん、ありがとう。」
と言い、奈穂の手から書類の束を受けとると
また忙しそうに 冷たい空気の中に
戻っていった。


「……暑いよ潤!」


届くはずのない声に イライラがたまる。


そしてその場に座り込んだ。


よーく考えなくてはいけないことがある。


いや、大したことではないのだが
考えなくてはならない。


叶わない恋なのは
もうなんとなく感じ始めている。



あぁ、あの時
諦めていれば良かったんだ…。


…だけど、無理だったもんね。


日に日に増していく好きを
私は止めることができなかった。


止める必要もないと思っていた。


それが 間違いだった。


あの人は 私の手の届かない人。

あの人は 私を苦しめる人。

あの人は 私を泣かせる人。

あの人は 私を痛め付ける人。


…だけど ……だけどね


あの人は 私を笑顔にする人。

あの人は 私を楽しませる人。

あの人は 私をドキドキさせる人。

あの人は 私をときめかせる人。

あの人は 私の鼓動を早くする人。


……あの人は 私の大好きな人。




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