恋花よ、咲け。
健吾の瞳は 怒りと涙に包まれていた。
さっきまでの柔らかな空気は一変
緊迫した空気に包まれた非常階段に
ポツポツと雨が降りだした。
それはまるで 弘也の心のなかを写すように
大粒の大雨へと変わっていく。
「……んだよ、返せよ!
何で今さら謝んだよ!
忘れたかったのに 何で掘り返すんだよ。
今まで 謝ろうとしたことなんて
一度もなかったじゃないか。
ただ手に入れたかった?
ふざけんじゃねぇよ!
お前は俺を使ったのか?
手に入れたい女が俺の彼女なら
手を出してもイイっつーのかよ!」
健吾は 今にも殴りかかってきそうな勢いで
声を荒げ続けた。
「……お前には分かんねぇか。
成績も 運動も ルックスも 野球も
全部俺より上だもんな。
そりゃ 奪われちまうよな…。
…いいさ、別に。
高木だけは渡さねぇよ。
奪われねぇよ。
手に入れて 離さねぇよ!
……次泣くのは俺じゃない。 お前だ。」